これまでいろいろな経験をした鮎釣りだが一応目標なるものを持っている。
一つ目は100河川を釣行することで二つ目は一日100匹釣ること、そして三つ目は30センチオーバーの巨鮎を釣ることだ。
鮎釣りを始めて今日までの釣行河川は37河川。一日の最高釣果は91匹。最高長寸は29センチだ。
天国に行く予定の77歳までに達成するためには、年平均2~3河川新たな川に行かなければならない 100河川行けば二つ目と三つ目の目標はついてくるはずである。
まぁ、現役の間は無理かもしれないので、退職後にと貯金もしている。ワンボックスに乗って全国鮎釣り巡りだ。それがボクの夢であり、そんなことを考えていると人生が楽しくて仕方がない。
昨年、ふとボクの鮎釣りの原点である徳島の勝浦川に行きたくなった。
高速道路も千円になったことだし、とさっそく車を走らせた。
指折り数えてみると18年ぶりだった。
さすがに川相は変わっていたが堰堤や大きな石はそのまま残っている。
あの時鼻カンもろくに通せなかったのに、とボクはおとり鮎に素早く鼻カンを通し瀬に送り込んだ。と、いきなりダダンガンガンッ! と強烈なアタリ。
野鮎に竿をのされたボクは必死で下流に走った。滑ってつまずいて、尻餅をついて這ったまま竿を立ててずぶ濡れで耐える。ものすごい引きだ。やっと取り込んだのは24センチのでっぷりした野鮎だった。ボクは真っ青な空を向いてウホォーッと奇声を上げて川にへちゃりこんだ。
対岸には一面黄色のひまわり畑が広がっている。そこにカブのおじさんが乗り付けて「釣れとるかぁ」と声を上げた。「今でかいのが来た」と返してボクは大きく手を振った。
息切れがする。熱波で景色が茹だって湾曲した。
いつの間にこんなに歳を取ったのだろう。
人生は胡蝶の夢、とはよく言ったものだ。
ボクは沸き上がる入道雲を遠望しながらゆっくりと立ち上がると、足下を確かめ上流のポイントへと足を進めた。
そして清らかな川の流れに人生を重ねながら、これからもこうやって生きていくのだろうと思った。