いつの間にやらボクは皆からガバチャと呼ばれるようになっていた。
それは、糖尿病と診断されてからグゥワバ茶を毎日飲み始めたことに起因する。
職場では販売で回ってくるヤクルトおばさんのカモになっていた。
ボクが机にいなくてもグゥワバ茶だけは置かれている。
やがて血圧も高くなりそれに効くドリンクも飲み始めた。ヤクルトおばさんにしてみればカモがネギしょって座ってるようなお得意さんだったのだろう。
カモネギなボクは近所の医者からも本年もよろしくお願いいたします、などとめでたくない年賀状が届いたりした。
仕事をしていたら、他人の会話でも「グゥワバ茶が」などと聞くとつい振り向いてしまう。自分でもおかしな三高中年になったものだと思った。三高と言っても、給料、学歴、身長ではなく血糖値、血圧、高脂血症の三高なので情けない。
とにかく運動しなければと毎日昼休みに職場のビル内を歩き始めた。
階段を上がっていてふと後ろを見ると、ボクの後ろに行列ができている。
ボクの上る速度が遅すぎたのだ。慌てて壁に張り付いたら洪水のように行列が吹き上げてきた。こんなにもみんな運動しているのかと驚いたが、ボクの遅さは何とかしなければならない。生来ボクはなにもかも動作がのろいのだ。
家内からもよく「でぇ~い、ちゃっちゃとするっ」とよくせかされる。
まず、歩くのがのろい。いつもノソノソ歩く。
狭い歩道を歩いてたら「ちょっとどいてよ」と背後から言われ「すんません」とよけたらカラカラカラと点滴器を腕に刺して引きずるおばさんに追い抜かれたことがある。