その後、休みごとに勝浦川に鮎釣りに行った。
時には子供を連れて泳がせながら釣ったりもした。
いつも2、3匹で10匹も釣れたら大漁で大喜び。
でも家内はボクの釣った鮎を食べてはくれなかった。
今も食べてはくれない。
家内は「ただ鮎が好きでないだけ」と言うが、ボクはそれ以上訊かないことにしている。
徳島で四年間暮らしたボクらは、再び和歌山へと転勤することになった。
長男は小学校三年生となり体もグンと大きくなっていた。
今でも忘れないが夕食の団らんでカレーを食べていたときのことだ。
「ねえ、お母さんどうしてお父さんと結婚したの?」と長男がスプーンを動かしながら訊いてくる。
家内との馴れ初めを訊くなんてこのガキもうませてきやがったのか、とボクは口元を緩めた。
家内も少し気恥ずかしそうに気の利いた返事を探しているようだった。
だが、次の長男の言葉にボクらは絶句した。
「趣味わるいで」
えっ。
「お父さんと結婚するなんて、お母さんメッチャ趣味悪いで」
なっ! ボクはカレーのスプーンをカチャリと置いた。
「ねえねえ、シュミィって何?」
と小学校一年の次男まで訊いてくる。
「そんなん知らんでええわいっ」
とボクは憮然と返した。
家内が食べていたものを吹き出しそうになって慌てて口に手を当てる。
相手は子供だ。おさえておさえてと心の温厚派がボクをなだめた。
一方で、こ、このぉてめえに言う権利はねぇ! と心の激高派が捨て台詞を言って消え去った。
長男は何食わぬ顔でカレーをカチャカチャ食べている。
家内は口元を押さえ体をしゃくって笑い続けた。
こんな感じで子供たちが順調に成長する一方、ボクは順調に太っていった。